ユトレヒトへ行く前に
「旅のしおり」を作るにあたって、とても悩んだことがあった。
初日はオランダに到着してゴッホ美術館。2日目はメインイベントのユトレヒトめぐり。3日目は美術館めぐりとオケ鑑賞。4日目はもう帰国しなければならない。14時半の飛行機だから、遅くとも12時までにはスキポール空港に着かなければ。本当は行きたいところは他にもあったのだが。どうにかならないものか。
今日は朝からアムステルダム中央駅に出て、そこからオランダ鉄道に乗ってユトレヒトに向かうことにしていた。しかし私にはどうしても行きたい場所があった。
ねえ、ちょっとだけでいいから、風車小屋見に行かない?
やっぱオランダといえば風車でしょ。
ええっ?時間ある?大丈夫なの?
大丈夫。計画はばっちり。
オランダで風車が見られる場所として有名なのは、キンデルダイク。でもアムステルダムからはかなり離れた場所にあり、片道2時間半以上かかる。
規模は小さくなるが、ザーンセ・スカンスというところなら、泊まっているホテルから30分もあれば着く。
ザーンセ・スカンスは伝統的な民家や風車を移設して保存している村である。愛知県にある明治村みたいなイメージ。
昨日乗り過ごして着いてしまったスローテルダイク駅(Sloterdijk)からオランダ鉄道に乗り、最寄りのザーンダイク駅(Zaandijk Zaanse Schans)まではSprinter(普通電車)で17分。
風車村を楽しんだあとは、再びスローテルダイクへ戻り、そこからIntercity(特別快速)に乗って37分でユトレヒト中央駅(Utrecht Centraal)着という無駄のないスケジュールだ。
スローテルダイクまではそんなに遠くないから歩いて行かない?
オランダの街を感じたいし。
通ったルートが悪かったのか、スローテルダイク駅まで街を感じることは一切なかった。オランダ鉄道の線路の周りには土手が広がっており、列車が中途半端な位置でいくつか留まっている。車両基地の駅なのだろう。つまりだいぶ郊外。
街を感じることはあきらめて歩いていると、自転車が乗り捨てられていた。しかも前輪がない。
しかし、そんな物騒な場面でさえ、ひとつのアートのように感じてしまう、オランダ・マジック。
5分くらい歩くと、きのうは暗くてよく見えなかったスローテルダイク駅の全貌が見えてきた。なんてモダンな建物なんだろう。
駅前の歩道橋はレインボーカラーで塗られている。オランダでその後もよく見ることになるレインボーフラッグは、LGBTのプライドを象徴する。
話は逸れるが、オランダは個人の意思を尊重する自由の国である。大麻・売春・同性婚・安楽死これらすべて合法。
国が違えばこうも文化が違うものか。私たち日本人からするとびっくりしてしまうけど、国の秩序はきちんと保たれているのである。
スローテルダイク駅に着き自動券売機で切符を買う。
え、これクレジットカードどこに差すの~?
そこから~?やば!
スッフィーがいてくれてよかった。ひとりじゃどこにも行けないよう。