ブルーナさんゆかりのカフェ
いくら健脚で体力があっても空腹は満たせない。
スッフィーはお腹が空くと機嫌が悪くなるという、わかりやすい性質の持ち主だった。
でも考えてみたら今日はホテルでのまずい朝食バイキング以来何も食べてないし、気づけばもう3時前。スッフィーじゃなくてもご機嫌ななめになるか。
じゃあごはん食べよう!ごはんごはん!
ぜひ行ってみたいお店があった。
ブルーナさんが自宅からアトリエに向かう途中で必ず立ち寄っていた「カフェ・オーロフ」だ。
ブルーナさんはいつも決まった席に座りコーヒーを飲んでいたという。その席には「ブルーナさんここにあり」みたいなプレートが貼ってあったのをテレビで見たことがある。
カフェ・オーロフはドム塔のすぐ近く。
お店の前はオープンカフェになっていて、座ってコーヒーを飲みながらくつろいでいる人がちらほら。
佇まいがいかにも、昔から地元の人たちに愛されてるカフェなんだろうなあ、ということを感じさせる。
なんだか急にドキドキしてきた。私たちみたいなミーハー観光客がきゃぴきゃぴしながら入るような店じゃないんじゃないか・・・。
でもここまで来ておいて怖気づいてる場合じゃない。なによりスッフィーのご機嫌を早く回復させないと。
勇気を出して店内に入ってみた。
Hello...
May I take the seat?
Yes! Of cource!
若い男性の店員さんが笑顔で迎え入れてくれた。それだけでもう緊張がほぐれた。
店内は典型的なオランダの「ブラウンカフェ」といった感じ。古くからその地域に根差した、古い木造のインテリアが印象的な、文字通りの茶色いカフェだ。
私たちは入口から離れたテーブル席に座った。
本当はブルーナさんのいつも座っていた席を見たかったけど、お客さんも結構いるし、とても探せる雰囲気じゃなかったので諦めた。
でもこうしてブルーナさんごひいきのお店に来られただけで幸せ。
お腹もすいているし、さっそく注文したかったが、メニューが見当たらない。
ちょっと待ってみたが、持ってきてくれる気配もないので、
Excuse me!
May I have a menu, please?
せっかちな観光客だと思われただろうか。でもお腹空いてるんだもん。
メニューはオランダ語と英語で書いてあった。食事はサンドイッチがメインらしい。まあカフェだもんね。
ねぇねぇ、サンドイッチも食べるけど、アップルパイも食べたーい!
まだ食べる前だけど、スッフィーはすっかりご機嫌になっていた。つづく。